令和6年度 全国労働衛生週間に寄せる

スローガン ~ 推してます みんな笑顔の 健康職場 

テーマ「正論を述べるときには慎重に

「パワーハラスメント防止法」とも呼ばれる改正労働施策総合推進法が2020年6月から大企業で施行されています。その後、2022年4月に対象が拡大し、中小企業でも義務化されて2年経った今、「もう知らなかった」では済まされません。ハラスメントの定義もしっかりと中小企業まで周知されてきた感があります。しかしながら、令和5年度厚労省の労働衛生調査によると「心の病」で労災認定された数は5年連続で過去最高を更新、その精神障害発症の要因の第1位も「上司によるパワハラ」となっています。毎年増えているのが気になるところです。

法的にハラスメントとは認定されないものの相手を追い詰めるものに「正論」があります。「正しい言葉にはトゲがある」といわれるように「正論」の言い方・表現には、充分な注意が必要だと思われる事象が発生しています。

ところで、人の心理として、「両価性」「間違い指摘反射」というものがあります。

「両価性」とは、ある変化に対して変化したいという動機としたくないという動機の二つが同時に存在するというものです。例えば、「たばこは体に悪いから辞めた方がいいですよ」と言われると意地でも止めないと思ってしまうというものです。あまりに正論過ぎて、反論のしようがないが、感情的になり、言いなりになりたくないのです。

「間違い指摘反射」とは、人にもともと備わっている性質で、何か間違ったことがあると訂正したくなる反射のことです。

今度は逆に伝える方として、相手が間違えていると思った瞬間に「それは違う」と正してしまう反応のことです。最後まで話を聞かないで途中で遮られると相手は、それ以上言えなくなってしまいます。

皆さんの会話の中で、そんな事例によって、嫌な気持ちになったことはあるのではないでしょうか。特に職場における上司の立場から正論を述べられると部下はどこにも逃げ場がなく、追い詰められてしまいます。そのため、正論を述べる際には、言い方や表現に気を付けて、相手を傷つけないように注意が必要です。

昨今一部の若手社員が退職する事象が残念ながら発生しています。組織内のコミュニケーションの研究において、満足のいくコミュニケーションによって従業員ニーズが満たされると、従業員は職場内での良好な関係性を築くことがわかっています。従業員の就業継続意思に影響を与える心理的プロセスとして、「情緒的コミットメント」と「知覚された組織的支援」があります。つまり、上司や同僚との関係性が良好なら就業継続意思に良い影響を及ぼし、組織が自分たちの貢献をどの程度評価しているか、自分たちのwell-being(心身や社会的に良好な状態)に対してどの程度配慮してくれているかについて従業員が良い感触を持てているかによって影響されるというものです。今、ハラスメントではないけれど、以上のことも参考にしていただき、各職場において良い話し合いをされることを期待しています。