LGBTと日本の幸福度(労経ファイル2019年6月号)

LGBTとは

最近、筆者は「LGBTの職場における課題」というテーマの研修会に参加しました。

LGBTとは、レズビアン(女性が好きになる女性)、ゲイ(男性が好きになる男性)、バイセクシャル(女性も男性も好きになる人)、トランスジェンダー(身体の性と自認する性が異なる人)の頭文字から来ていますが、実際にはこのように4つに割り切れるものではなく、グラデーションのように人の数だけ性の在り方があるのだと認識させられました。

最近の調査では、国内のLGBTの人口比率は約5~9%で、約13人~20人に1人の割合となります。これは、日本人の左利きの人やAB型の人よりも多いことになります。研修会では、実際にトランスジェンダーの人の体験談を聞いたのですが、LGBTを単なる性の話や恋愛の話だと誤解されがちで、生き方や人権の課題であると捉えてほしいとありました。実際にカミングアウトできなくて、心身ともに辛く、生きづらい思いをしている方が多くいるようです。

国内産業界においても、労働力の確保と定着率の向上からLGBT対策に取り組み始めた企業が増えてきています。国内LGBTの就業者数は約484万人とも言われ、LGBTの社員にとっても働きやすい職場は生産性や採用活動にも影響を与えます。今後LGBTへの対応を考えないと人材流出のリスクを高めることに繋がるだけでなく、LGBTの客層を対象にしたサービスを提供するという機会を失うことにも繋がっていくようです。まさに、人材活用、マーケティング両面から取り組む必要性があり、働き方改革を考えるにおいては避けては通れない問題となっています。

日本の幸福度との関係

また、国連の関連団体が「世界幸福度ランキング2019」を3月20日の国際幸福デーに合わせて、日本の幸福度の調査結果を発表しました。今回で7回目となる2019年は、156ヵ国を対象に調査したもので、日本は過去最低となる58位になった模様です。これは先進7か国の中では最下位に位置します。この調査では、各国の国民が「どれくらい幸せと感じているか」を評価したものに加えて、健康寿命、1人当たりのGDP、腐敗汚職のない社会、社会的支援、社会の自由度、他者への寛大さといった6項目において幸福度を計っています。

調査結果では、健康寿命・・・2位、1人当たりのGDP・・・24位、腐敗汚職のない社会・・・39位、社会的支援・・・50位、社会の自由度・・・64位、他者への寛大さ・・・92位という結果でした。この中で、特に足を引っ張っているのが、社会の自由度と他者への寛大さという結果です。社会の自由度は、「あなたは、自分の人生で自分がすることを選択する自由に満足か不満か?」という質問への回答結果のようです。このことから日本の幸福度の低さとLGBTとは深い関係があるのではないかと考えました。

幸福度上位の国から見えるもの

それでは、世界幸福度上位を見てみます。トップ5は、1位フィンランド、2位デンマーク、3位ノルウェー、4位アイスランド、5位オランダと北欧諸国が占めています。ネットで北欧諸国のLGBTへの考え方を調べてみますと、LGBTの権利は、「個々の違いを乗り越えるための人権であり、生まれてきたルーツや背景に関係なく、全ての人々に自分らしさを追求する権利。オープンで寛容であること、違いを受け入れることが大切だ」とあります。北欧は、ゲイ幸福度ランキング(Romeo 2015)においても、1位アイスランド、2位ノルウェー、3位デンマーク、4位スウェーデン、12位フィンランドと上位にランクイン。また、LGBTが働きやすいヨーロッパの国ランキング(Export Market 2017)でも、1位ノルウェー、2位フィンランド、5位スウェーデン、6位デンマークと上位を独占しています。北欧では早くからLGBTを人権問題と捉えています。このことと北欧諸国が世界幸福度の上位ランクが見事に繋がっていることが分かります。

日本の幸福度を上げるには

この4月から働き方改革関連法案がスタートしました。同時に外国人労働者の受け入れ拡大に向けて改正出入国管理法が可決され、5年間で最大約34万人の受け入れを見込んでいます。今後ますます人材の就業形態の多様化や人材の外部調達が進んでいく中で、LGBT問題のような生き方、価値観やライフスタイルなどの多様性を受け入れることは働き方改革の改善になり、結果的に日本の幸福度を押し上げることになると思われます。